十の並列した脳

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「心理学 第5版」要約メモ #2 Ⅱ部4章と5章

#2ではⅡ部より,4章と5章を扱う。

 

心理学 第5版

心理学 第5版

 

 

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部 こころの働き まとめ1

4章 学習・記憶

無条件反射を生じさせない中性刺激を無条件刺激と時間的に接近させて反復, 対提示すると, 中性刺激が条件刺激としての働きを獲得して, 条件反射が成立する. このような手続きを, 古典的条件付けという. この条件付けの特徴に, 消去, 自発的回復, 般化, 分化がある. 刺激により誘発される反射を対象とした古典的条件付けに対して, 自発的な行動の変容は, オペラント条件づけによる. これらの条件付けにより様々な行動の取得が可能になるが, 生物学的制約を越えることはできない. 強化スケジュールのうち, 部分強化は連続強化に比べて消去抵抗が大きい(部分強化効果). 潜在学習とは, 報酬がない時に潜在的に進行していた学習である. 

技能学習は, 認知, 連合, 自律の3段階に分けられる. 連合の段階の練習には, 結果の知識と内的なフィードバックが重要な役割を果たす. ある学習を行うと, 他の学習を促進したり遅らせたりするとき, 学習の転移があるという. 

ミラーとダラードの実験から, ネズミはリーダーの行動を模倣することを学習し, 学習された模倣が他のリーダーや装置へと般化すること(模倣般化)を示した. ある種の模倣は条件付けの手続きにより学習される(模倣の強化理論). バンデューラによると, 観察学習は, 注意, 保持, 運動再生, 動機付けの4つの過程からなる. 

過去の経験を保持する過程を記憶という. 記憶の過程には, 3つの段階, 記銘(符号化), 保持, 想起(検索)が区別される. 想起には, 再生, 再認, 再構成がある. 記憶されていたことが, 想起できなくなることが忘却である. 外界からの刺激による情報は, ごく短時間だけ感覚に留まり, 刺激がなくなれば急速に消える. これを感覚情報保存という. 感覚のうち, 注意された情報だけが短期記憶となる. 短期記憶の容量には限界があり, 平均して7チャンクである. 短期記憶をリハーサルによって維持することで, 一部は長期記憶に取り込まれる. 精緻化, 組織化, 体制化のような意味づけは長期記憶を助ける. 記銘後時間が経つにつれて, 忘却の率が増す. これは保持曲線により示される. 長期記憶の忘却の原因に, 他の類似した事柄の記憶(干渉)が挙げられる. 経験の保持について意識していないにも関わらず, 現在に影響を与えている記憶を潜在記憶とよぶ. エピソード記憶意味記憶は, 顕在記憶に分類される. 

構造説において, 記憶はニューロン間の接合箇所であるシナプスにおける変化とみられる. 脳には非常に精密な機能分化がある(機能局在説). 記憶の働きは, 経験が様々な感覚受容器で受容され, それぞれの感覚系ごとに処理された後に, 大脳の感覚連合野に形成されると考えられている. これまでに, 記憶のみが選択的に障害される健忘症を研究することで, 記憶に関わる神経機構を明らかにしようとした. 今日では記憶(宣言的記憶)の形成に関与するのは海馬だとみられている. 扁桃体は情動・感情反応の記憶と関与していると言われている. 

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図1(左)脳の全体像 (右)大脳辺縁系 http://www.akira3132.info/limbic_system.htmlより引用

 


5章 感覚・知覚

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図2 大脳皮質の領域 https://www.smilenavigator.jp/tougou/about/science/より引用

人間の感覚は, 視覚, 聴覚, 嗅覚, 味覚, 皮膚感覚, 自己受容感覚, 平衡感覚, 内臓感覚の8系統に分けられる. 感覚の種類とそれに即した体験内容を感覚様相という. 各感覚系には, その末端に外界のエネルギーを受容する受容器があり, それぞれ特殊化した機構をもつ. 受容器ごとにそれに適したエネルギーがあると考えられ, それらを適刺激とよぶ. 各種感覚は, その情報源が身体表面に接しているか離れているかに応じて, 接触感覚遠隔感覚の2種に分類される. ヒトの場合, 異種の感覚の間で不調和をもたらすような実験場面を設けると, 多くの場合, 視覚優位の統合がなされる. 刺激閾は感覚を生じるのに必要な最小の刺激強度を指し, 弁別閾は2つの刺激の違いを感じうる最小の刺激差を指す. 等価値を測定して, 物理量で表したものを主観的等価値(PSE)とよぶ. 閾やPSEを測るのに用いられる精神物理学的測定法には, 調整法, 極限法, 恒常法などがある. 視覚, 聴覚には感覚受容器に与えられた刺激作用を外界に位置付けて知覚する働きがある. これを感覚経験の外在化という. 

 

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図3 眼の構造 http://www.nichigan.or.jp/youngdoctors/subspecialty.jspより引用
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図4 錯覚の例 http://www.psy.ritsumei.ac.jp/~akitaoka/catalog.htmlより引用

前方の1点を固視したときの, 「見えている空間」を一般的な定義では視野とよぶ. 視覚系の光受容器は網膜の中に含まれる. このうち光を受容するものを光受容細胞とよび, ヒトでは桿体錐体の2種類がある. 視覚の二重作用説によると, 桿体は暗所視, 錐体は明所視で活動する. ヒトの網膜内には, 分光吸収特性を異にする3種類の錐体が備わっている. 色の見え方は明度(明るさ), 色相, 彩度(飽和度)の3つの属性で記述できる. 異なったスペクトル光を加えて作られる混色を加法混色とよび, 異なる分光吸収特性をもつ色材によって作られる混色を減法混色とよぶ. 混色によって白色となる2つの色を互いに補色関係にあるという. 対比効果には色の対比と明るさの対比がある. 一般に, その対象の見かけ上の特性は保たれて知覚される傾向を, 知覚の恒常性という. 知覚と物理的世界とのあいだに生じるズレは, 錯覚として体験される. 錯視の例に, 幾何光学的錯視や主観的輪郭, 逆さメガネなどが挙げられる. ルビンの壺は図と地の現象的特性を明らかにした. ヴェルトハイマー-コフカの輪は, 視知覚には自動的な視知覚過程と認知的過程が混じり合って働いていることを示した. 眼から前方に向かって延びる距離を知覚する働きを奥行き知覚という. それは各種の手がかりによって成り立つと考えられている. 運動知覚において, 初期視覚過程の自動的メカニズムにより仮現運動が知覚される. 高等な動物では知覚機能の可塑性が増大し, 経験に応じて自らの働きを変える柔軟な側面がある. 先天盲開眼者の視知覚体験により, 視知覚の発達過程を探ることができる. 例えば, 開眼手術後, 幾何学的な基本図形が見分けられないような初期段階でも, 図・地の分化はすでに成立していたケースがある. また別のケースでは, 物を識別できずに, 属性だけを抽出した. 脳損傷による視知覚の機能変化からも視知覚の本性を明らかにすることができる. 視細胞で光エネルギーから神経活動に変換された視覚情報は, 視神経, 視交叉を経て, 視床外側膝状体に達する. 更に有線野から周囲の視覚連合野に伝わって, 高次の処理を受ける. 視覚の伝導路は, 全体を通して正確な部位的対応を保っており, 網膜の各部分は有線野に整然と投射されている. これらの損傷により, 視野欠損, 皮質盲, 中枢性錯視などの刺激の見え方の変化が生じる. これに対して, それがなにであるかが分からない状態を失認症という. 失認症の例に, 物体失認, 相貌失認, 純粋失語, 環境失認などが挙げられる. 脳の損傷によって起こる出現率の高い症状に, 右半球損傷による左半側空間無視がある. 

 

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図5 耳の構造 http://www.jibika.or.jp/citizens/daihyouteki2/mimi_disease.htmlより引用

耳に入った音は, 外耳中耳内耳を経て脳へ伝わる. 音の高さの分析は, 蝸牛の基底膜で行われる. ここでは, 入口付近では高い音が, 先端に行くにつれて低い音の分析がされる(進行波説). 音の感覚は大脳皮質の聴覚野でなされるが, どのような音であるかを認識するには言語野など他の領域の関与が必要である. 音は純音複合音に分類される. 純音は, 波形が正弦波をしており成分が1つしかない音である. 複合音は純音の組み合わせで表せる. 更に音は物理的属性心理的属性とにも分類できる. 言語に使用される音声を言語音とよぶ. 喉頭原音が声帯から口唇までの声道を通る間に, 多くの異なった周波数で共鳴が生じて, 特定の言語音が作られる. 言語音の共鳴をフォルマントとよぶ. 言語音の中で意味の違いに役立つ抽象的な音声部分を音韻といい, さらにある語と他の語とを区別する音韻の最小単位を音素という. それぞれの動物ごとに, 聞くことができる音の大きさと高さ(可聴範囲)は決まっている. 1つの音の存在が他の音を聞こえにくくする現象を聴覚マスキングという.周波数が近くなるとマスキング量は大きくなるが, あまりに近いと唸りが生じて逆にマスクされた音は検知しやすくなる. 聴空間の中で音がどこから聞こえるのかを定位することを音源定位という. 脳の損傷の例に, 右半球側頭葉損傷による環境音失認や, 失音楽などが挙げられる. 

 

 

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図6 皮膚の構造 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9A%AE%E8%86%9Aより引用



ヒトの皮膚には有毛部無毛部とがあり, 無毛部は触感や圧感などの体験を引き起こし, 外界を能動的に探索し, 必要な情報を抽出する器官として働く. 体性感覚の伝導路は, 脊髄・延髄を通り, 視床を経由して1次体性感覚野に投射している. 体性感覚のホムンクルスは, 口唇や舌, 手指が他の部位に比べて体性感覚野の大部分を占めることを示す. 皮膚表面の2点に圧刺激を加えた時, それが2点とわかるのに必要な最小距離を触覚2点閾という. ギブソンによると, 触覚によるパターン知覚は, 受動的触知よりも能動的触知の方が優れている. 

 

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