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「心理学 第5版」要約メモ #3 Ⅱ部6章と7章

#3ではⅡ部より,6章と7章を扱う。

 

心理学 第5版

心理学 第5版

 

 

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ryosuke-okubo.hatenablog.com

 

 

部 こころの働き まとめ2

6章 思考・言語

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図1 オーギュスト・ロダン「考える人」 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%80%83%E3%81%88%E3%82%8B%E4%BA%BA_(%E3%83%AD%E3%83%80%E3%83%B3)より引用

思考とは, 生体が問題解決のための新しい手段を見つけて対処する行動を生み出し, 支え, 方向付ける内的な心的過程を指す. 一般に, 試行錯誤の行動は, 与えられた課題が生体にとって難しく, 解決のための糸口が直接認知できないような場合に生じる. 洞察とは, 生体が新しい課題状況におかれた際に, その状況を新しく見直すことによって再編成して, 問題解決のための有効な手がかりを獲得する働きをいう. 洞察行動の例に, 回り道, 道具の使用, 道具の製作が挙げられる. 

 

認知発達のモデルにピアジェの発達段階説がある. 生後1ヶ月までの新生児の行動は, 大半が反射的な感覚支配的行動である. やがて周囲の環境との関わり合いにより行動を修正し, 2歳頃までに対象物への永続性を理解し, シンボル機能が出現する. 内的な処理が正しくできるような内部的構造のことを操作とよび, 操作ができていく準備の時期を前準備期とよぶ. 幼児期の思考の特徴として, アニミズムをもつ, 視点の移動を理解していない, 自己中心性が強い, 中心化がある, 保存の概念が成立していない, などのことが挙げられる. 7, 8歳頃になると脱中心化するようになる. 11, 12頃には具体的操作による思考, 形式的操作による思考が身につく. 

 

知覚・認知, 記憶, 言語, 思考などの領域で扱われた中心概念としての情報を知識とよぶ. 異なる対象を共通の側面に注目して同じ枠に入れて捉え, 同じ対象のようにみなして反応することを等価反応という. 周囲の事物をそれぞれの属性の共通な側面(内包)をまとめてとらえようとする働きを概念という. 概念は, 外延や階層構造をもつ. 記憶への貯蔵のために, 情報をこのいずれかの型に当てはめることを符号化という. 眼前に刺激対象が存在しないときに, それが存在したときと類似したと知覚体験をすることをイメージという. 

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図2 ハノイの塔 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%8E%E3%82%A4%E3%81%AE%E5%A1%94より引用

課題が与えられたとき, 何度も用いてきたような解法を繰り返して用いると, 習慣的な構えができあがる. 個別の事例を集めて一般的な原理を引き出すような方法を帰納法とよぶ. 以前に解いたのと類似した問題を与えたときは, 問題の本質に含まれる類似性によって有効な類推による推理が働きやすい. 一般的な原理から個別の事例を推論するような方法を演繹法とよぶ. ある命題の逆や裏は成立するとは限らないが, 対偶は常に成立する. ハノイの塔を用いた問題解決の実験において, 中間目標の発見が1つの基準となる. 発見の様相を説明したものに, ワラスの4段階説がある. 理詰めに解いていけば必ず正解に達する手続きにしたがうアルゴリズムの推論に対して, ヒューリスティックな推論は, 経験則を用いる, 思いつきを重視するなど, どんなことでも試みる推論のしかたを指す. 

 

非言語コミュニケーションは, 言語に劣らず「対ひと」関係の維持に大きな役割を果たす. ことばを話せない乳児と養育者とのあいだには前言語的コミュニケーションが成り立っている. 

 

養育者の言語的な働きかけは, 乳児の音声言語の発達を促す. 生後2, 3ヶ月頃には喃語が始まり, 1歳半頃になると1語発話が始まる. しかし子どもは, ことばを話す人と接する状況に置かれないと, 話せるようにはならない. 乳幼児の指差しの動作は, 母子間コミュニケーションの輪の中に「自己-事物-他人」を含んだ三項関係を成立させ, 意図的なコミュニケーション行動としての機能をもつようになる. ことばはまず, 他人とのコミュニケーションの道具として(外言)出発するが, やがて思考の道具として内在化して内言としての働きをもつようになる. 

 

ヒトの言語は, 一定数の音(音素)が組み合わさって特定の語(形態素)が作り出され, さらに一定のルールに基づいて語と語が関係付けられて文を構成する, というように多重の文節をもった階層的な構造をもっている. 記号の配列は, ただ1列に並べられた記号列の連鎖でなく, 特定の構造をもつ. 文としての記号列を受け取る場合, また文を産出する場合, 文の内部構造を考える必要がある. スキーマとは, ある集団に共通な過去に蓄積された知識の集合であり, 新奇な情報を取り入れるときに従来の見方に引き寄せてしまう働きである. 生成文法とは, 特定の言語の文法的な文を全て生成し, 非文法的な文を生成しないしくみをもつような文法をさす. LAD(言語獲得装置)とは, 聞いた会話文や発話の内容から文法を抽出する装置である. LADが作動し始めるためには, 言語獲得支持システム(LASS)の働きも必要である. 

 

失語症は, それまで自由に使いこなしていた言語が, 言語野の損傷により使えなくなった状態を指す. どのタイプの失語症にも, 喚語障害という共通の特徴がある. ブローカ失語は発話の非流暢性を特徴とする. 超皮質性運動失語はブローカ失語とほぼ同じ特徴をもつが, 復唱の良い点が異なる. ブローカ領野は発話の運動機能に関係していると考えられている. ウェルニッケ失語は流暢性失語の代表であり, ことばを聞いて理解することが困難である. 超皮質性感覚失語はウェルニッケ失語とほぼ同じ特徴を示すが, 復唱の成績が良い. ウェルニッケ領野は, 一時聴覚皮質で受け取った聴覚情報を1段階高いレベルで処理する聴覚連合野である. 伝導失語は, 他の言語機能は比較的保たれているのに, 主として復唱が悪いタイプである. これと逆の症状を示すのは混合型超皮質性失語である. 失行症は, 基本的運動障害にも知識障害などの一般的な精神障害にもよらない行為の障害である. 

 


7章 動機づけ・情動

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図3 ステーキ 見ているだけで視床下部がはたらく

食飲行動のきっかけは, 空腹感や満腹感, 渇きや飽水感が視床下部で感知されることである. 性行動(性衝動)の基礎過程には, 成長に伴う性ホルモンの分泌量の増加と, それに関わる視床下部ならびに大脳辺縁系の活動の基礎過程が含まれる. ヒトの場合, 性ホルモンのほかに, さまざまな異性刺激の作用にしたがう. 性的対象や性行動に関して偏りが大きい場合を性倒錯とよぶ. 

 

驚愕反応後退的反応は, その個体に恐怖・恐れの情動が生じていることの現れである. 恐れが生じているときの最も一般的な行動は逃走行動である. 逃走行動が取れないときに体験される, 持続的で不快な情動は不安とよばれる. 他者からの身体的侵害や自己領域内への行動的な侵害があったとき, 怒りの情動が体験される. 護身の必要が生じたときの消極的対応は逃走行動や恐れであり, 積極的対応は攻撃行動や怒りの情動である. 

 

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図4 猫の親子

多くの動物は, 子どものしぐさや顔つきなどによって, また鳴き声や呼び声によって, 養育的行動が解発される. 他者との相互的ならびに協力的関係において, 積極的・友好的な方向への行動を支えている過程が, 親和動機づけである. 逆に, 社会的・対人的状況における拒否的・消極的な方向については, 排除の動機づけが想定される. 他者の目的的行動を手助けする行動の特徴は, 利他性とよばれる. 無刺激・無変化の状況から抜け出そうとする動機づけを活動への動機づけという. 網様体賦活系が中程度に活動しているとき, 快適感が経験される. そのときにはまた, 身体的・心理的機能が最もよくまとまりをもってよく働く. これは「機能的快感」ともよばれ, 適度の緊張感として体感される. 

 

個人が属している社会・文化において好ましいとされる目標に対して, 一定レベル以上の水準でそれに到達しようとする過程のことを, 達成動機づけとよぶ. 原因帰属の考え方にしたがえば, 達成動機づけが強い場合には課題達成における成功の要因を内的要因(ex. 自身の能力, 努力)に帰属させることが多い. したがって成功が自尊傾向を高める. 

 

フラストレーションとは, 欲求不満の情動の体験を総称したものであり, 障害により目標に接近する行動が順調に進行しなくなったときに生じる. 予期しない障害に急に出会うと, 直接的な攻撃行動が起こりやすく, 同時に「怒り」の情動が体験される. そのほかに, 無気力に陥ったり, 迂回行動や代償行動をとったりすることがある. 障害に出会ったとき, 情動的な実行行動を自ら抑制し我慢する傾向のことをフラストレーション耐性とよぶ. 生体を引きつけたり, 反発させたりする環境内の対象の性質を誘発性とよぶ. 2つ以上の対象があり, それぞれの誘発性が拮抗するとき, 個人内部に生じる動機づけ相互間の葛藤をコンフリクトとよぶ. コンフリクトには, 接近-回避型, 接近-接近型, 回避-回避型がある. 精神分析学を創始したフロイトは, 人間行動の根源的な衝動として快楽原則にしたがう本能的な性の動機づけを重視して, その性的エネルギーとしてリビドーを想定した. フロイトによれば, パーソナリティはエス, 自我, 超自我の3種の機能から成り立った力学的構造である. 一方, 分析心理学者のユングは, こころ(プシケ)は自我, 意識, 自己からなる多層構造であるとみなした.