「入門・医療倫理Ⅱ」まとめ #1 全体の概要
「入門・医療倫理Ⅱ」
- 作者: 稲葉一人,蔵田伸雄,児玉聡,堂囿俊彦,奈良雅俊,林芳紀,水野俊誠,山崎康仕,赤林朗
- 出版社/メーカー: 勁草書房
- 発売日: 2007/04/10
- メディア: 単行本
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医療倫理と銘打ってあり具体例が書かれた1巻の続きとして位置しているが,実際は一般的な倫理学の入門書である。
本記事では備忘録として,本書の概要を書き記すことにする。
目次
I 規範倫理学
第1章 功利主義
第2章 義務論
第3章 徳倫理
II メタ倫理学
第4章 実在論・認知主義
第5章 反実在論・非認知主義
第6章 メタ倫理学の現在
III 法と倫理の狭間
第7章 権利論
第8章 法と道徳
第9章 法と正義
IV ケース集
全体の概要
倫理学の領域は規範倫理学,メタ倫理学,記述倫理学の3つに分けられる。本書では扱うのは規範倫理学とメタ倫理学であり,加えて法と倫理の関係性について論ぜられる。
規範倫理学
規範倫理学では「何に倫理的価値があるのか」を探求する。これにより倫理的直観を体系化し理論づけることに役立てている。例えば尊厳死に対する意見の対立を,「殺人はいかなる場合でもいけない」という無危害原則と「本人の意思を尊重すべき」という自立尊重原則の衝突と見る。規範倫理学においては,行為の正しさをみる「正の理論」と人格や動機の善さをみる「善の理論」を区別することが重要である。詳細な理論には「功利主義」「義務論」「徳理論」などがある。
メタ倫理学
メタ倫理学では「そもそも倫理的価値とは何か」を探求する。メタ倫理学自体は,われわれが何をなすべきかという問いには答えないが,それを考えていく基礎として重要である。道徳的営みの特徴としては客観性と規範性があげられるが,例えばヒューム的な人間理解においては互いに両立し得ない。詳細な理論には「実在論・認知主義」「反実在論・非認知主義」「反ヒューム主義」などがある。
法と倫理の狭間
本書では「権利論」「法と道徳」「法と正義」について概説される。
医療倫理の分野では,さまざまな新しい権利が認知されるようになっているが,法的な権利として認められるまで,またそれを適用する際に問題が生じがちである。そこで,権利の性質をさまざまな方向から見ることにより,その存在価値を再確認する。
法と道徳は分離すべきか?現代においては法と道徳を完全に分離したものと考える法実証主義が有力である。しかし両者の関係は簡単には分断できない。道徳的な正しさと法的な正しさは時として合致しないことも,法と道徳の関係を考える上で重要である。
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