「心理学 第5版」要約メモ #5 Ⅲ部10章
#5ではⅢ部より,10章を扱う。
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10章 心理学の歴史
ヒッポクラテスは, 自然を構成する4つの根の考え方を受けて, 「からだ」を構成する4つの体液を仮定し, その影響を受けたガレノスはこれらに対応する4つの気質を仮定した. アリストテレスは, 「こころ」は生命の機能原理であると考えた. デカルトは, プラトンと同じく生得説を唱え, 「こころ」は人間にのみ経験される意識的事実であり, 対して身体は自動機械のようなものであると考えた. ロックは経験説の立場をとり, 観念の連合という考えを示した.
ヒッポクラテスは, 精神病は脳の不調和状態に基づく自然の病であることを強調した. 催眠を医療の手段として積極的に用い始めたのはメスメルであるが, それを科学的研究の対象としたのはブレイドであった. フロイトは「ヒステリーの研究」を著して精神分析学の一歩を踏み出した. 一方でフロイトの汎性欲説を批判する者も多かった. アドラーは性欲よりも優越欲を優先した. ユングはリビドーを幅広い生命的エネルギーとみなした.
19世紀のはじめ, 神経生理学の領域で感覚や運動に関する種々の事実が見出された. ヘルムホルツは3色説や共鳴説を唱え, 感覚生理学の確立に貢献した. フェヒナーは, 感覚と刺激とのあいだの量的関係を測定するための具体的手続きを体系化し, 精神物理学的研究法の基礎を築いた.
ヴントは「実験心理学」を提唱し, 対象を意識内容におき内観法によって分析する立場をとった. エビングハウスにより記憶研究が始められた. ジェームズは, 1870年代にアメリカで主流だあったプラグマティズムの影響を受け, 機能主義の立場に立ち, また意識の流れを強調した.
生物進化の考えについて, はじめて体系的な学説を立てたのはラマルクである. 後にダーウィンは自然淘汰の考えによる進化論を発表した. ロマネスは種々の動物行動の観察記録を集め, こうした研究領域を比較解剖学になぞらえて比較心理学と名付けた. ただしこれには, 研究方法が逸話的である, 動物を擬人化するといった問題がある. これに対しモーガンの公準が設定された. ソーンダイクは, 試行錯誤によってたまたま得られた成功は満足を伴うのでそれに先行する反応傾向を強めるという効果の法則を提唱した. 1912年, ワトソンは行動主義を宣言した. それはS-R心理学ともよばれた. しかしワトソンの主張は分子的・末梢的な立場として非難され, これを補う全体的行動や中枢的媒介過程への関心が高まってくる.
カッツやルビンらは, ヴントのとった内観法を排して, 現象をあるがままにとらえ, その現象的特性とそれを生起させている本質的条件とを実験的に明らかにしようとした. 彼らの研究上の立場は実験現象学とよばれている. この手法を受け継ぎながら, ヴェルトハイマーによりゲシュタルト心理学が生まれた. ケーラーは類人猿の問題解決行動が, 場面の全体的構造に即した「見通し」的行動であることを強調した. レヴィンはゲシュタルト理論の基本的な前提である力学的「場」の構想を, 個人の生活空間をめぐる諸問題や集団行動の分野にまで拡張した. ワトソン流の末梢主義を修正して, 刺激-反応系列のあいだに介在する生活体自身の役割を正当に評価する立場を, <新>行動主義とよぶ. トールマンは, 認知的要因を積極的に行動過程に取り入れた. ハルは文字通りの「変数」としての数量化に努力を払い, それらの変数を組み合わせて遂行行動を誘導する演繹体系の構築を試みた. スキナーは反応をレスポンデント型とオペラント型に分けた. ビネは, 精神発達遅延児の診断のため1905年に知能テストを開発した. ピアジェによる認知機能の発達段階説は, 発達の研究に大きな影響を与えた. ロレンツやティンバーゲンは動物行動学を推進した.
心理学は, 1970年代に公然と意識を研究対象として取り上げられるようになった. ただし乳幼児や類人猿に対しては「内的過程」という語を用いる. この新しい立場は認知心理学とよばれる. 1940年代から急速に発達したコンピュータにより, 従来の心理学の概念を情報処理の観点から見直す立場が提供された. 20世紀半ばに, ヘッブは心理学的な行動研究をもとにして, 独創的な神経科学的なモデルを提出した. その後, オルズは脳内の快中枢を見出した. 最近では, 社会神経科学という研究分野も認められるようになっている. トゥービィとコスミデスは, 進化生物学や行動生態学の影響を受け, 進化心理学を提唱した.