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「心理学 第5版」要約メモ #4 Ⅱ部8章と9章

#4ではⅡ部より,8章と9章を扱う。

 

 

心理学 第5版

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部 こころの働き まとめ3

8章 個人差

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図1 IQは平均100,標準偏差15の正規分布にしたがう


 

知能とは, 知的行動の基礎にある能力を指す. 生体への環境の適応の仕方は, 知的行動を伴う合理的な解決と情意的行動を伴う非合理的な解決との2つに大別される. 知能には個人差が認められる. 子どもが特定年齢の発達水準に達しているかを評定する, 知能テストがビネによって始められた. 評定された精神発達水準は, その後精神年齢とよばれるようになり, さらにこれを生活年齢で割った値が知能指数(IQ)とよばれるようになった. 16歳以上の知能を検査する, WAISはウェックスラーによって開発された. テスト課題は言語性と動物性に分けられ, 結果はプロフィールとして表示され, そこから診断がなされる. ビネの知能テストもウェックスラーのものも, 個人検査である. これに対して, 多数の人を対象に紙に鉛筆で応答させる集団式知能テストは, 軍隊検査としてアメリカで始められた. 

 

知能には色々な種類の認知機能が含まれている. それを分類し, 分離する統計的・数理的な解析の手法として因子分析法が考案されている. スピアマンは2因子説を, サーストンは多因子説を唱えた. 因子分析の代表として, ギルフォードの知性構造モデルがある. ギルフォードは, 知能とは情報処理機能であるという観点に立って, 知性は内容, 操作, 所産の3つから構成されるとした. 

 

ヘッブは知的機能発達と関わる生得的潜在力を知能Aとよび, 成長して知的機能が観察・測定できるようになったときのその発達の水準のことを知能Bとよんだ. したがって, 知能テストで測れる知能指数などは, 知能Bの測定値ということになる. キャッテルは一般的知能を, 結晶的知能因子流動的知能因子とに分けた. 知能テストから, 階層差と地域差が示される. 

 

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図2 個人差をどう分類するか?

性格という用語は, 情意的行動の個体差を扱う時によく使われる. 一方パーソナリティという用語は, 個人の行動特徴を知的側面も情意的側面も含んだ全人的なものとみなした時に使われる. クレッチマーは体格と性格の関係について, 循環気質統合失調気質粘着気質という類型を想定した. ユングは心的エネルギーの向きから, 外向性の人と内向性の人がいることを見出した. キャッテルは, パーソナリティを推定するための基礎となる単位を特性とよんだ. アイゼンクは因子論的類型論を提唱した. ゴールドバーグはビック・ファイブ論を示した. 類型論は, 比較的少数の典型を設けて個人的な全体像を記述するので, 直感的に理解しやすいが, 各個人における細かい特徴や程度の差異が見失われがちである. 一方, 特性論では, 各個人におけるパーソナリティの諸特性が程度あるいは強弱として理解できる側面をもつが, 特定個人の全体像ないし独自性を直感的に思い浮かべることができない難点をもつ. パーソナリティの検査法として, 行動観察, 面接法, 質問紙法, 投影法がある. 

 

パーソナリティの発達説として, フロイトの性愛説エリクソンの漸成説がある. フロイトの性愛説では, 口唇愛期, 肛門愛期, 男根愛期, エディプス期, 潜伏期, 性器愛期に分類される. エリクソンの漸成説において, 中でも自我同一性の確立が重視される. 

 

心的障害は, 外因性, 内因性, 心因性精神障害が絡み合っている. フロイトは, 神経症症状を抑圧された無意識の欲求の現れであると考え, 精神分析療法を考案した. 来談者中心療法を提唱したロジャーズは, 来談者の内的な実現傾向を重視するとともに, 動機づけ過程は全て成長的であるとみなした. ロジャーズによれば, 自己概念と体験の不一致状態(自己認知の歪み)が神経症の原因であると考えた. アイゼンクは, 神経症の症状を誤って学習された行動であると考え, 情動反応, 条件性情動反応, 回避反応の3段階に分けて説明した. 情動の働きは, 大脳辺縁系などの相互作用によって支えられている. 認知的な過程において, 特に前頭前皮質の働きが重要な役割をもつ. ヒトの場合, 右半球が情動の認知にとって特に重要とされている. 

 


9章 社会行動

乳児が微笑すると, 親は喜んで, 笑いかけたり声をかけたりする. それはまた子どもの微笑や声を出す反応を強化する. このようにして, 親と子の初期の社会的相互関係が成立する. 生後7, 8ヶ月になると人見知りが現れる. 子どもは1歳頃までに, 親, 特に母親に強い愛着を示すようになる. 愛着を持たれた人は子どもにとって同一視の対象となり, 子どものいろいろな社会的学習を促進することになる. 2歳を過ぎると, 自我の芽生えにより第一反抗期に入る. 青年期には自我の確立が進み, 第二反抗期に入る. 子どもの対人関係は発達の過程で多様化し, 友人や親友を持つようになる. 

 

人々が自分自身に関して抱いているさまざまな考えは, 1つのまとまりとして体制化して結びついて自己概念を形成する. 人は他者との比較を通じて自分の意見や能力を明確にしようとする. そうした比較は, 通例自己評価を高めるような形で行われることが多い. 自己評価を高める方法として, 栄光浴セルフ・ハンディキャッピングが行われる. 対人認知とは, 他人の個人的特徴に関する認知や判断などについて推測する過程である. 顔の認知はその際に重要な要素となる. ハイダーは, ある人と他者とその両者に関係するもの・事象との3者をひとまとめにした認知的ユニットを想定して, ユニット全体として均衡の状態に向かう傾向があることを指摘した. 定型的な認知の仕方・認知の枠組みをスキーマといい. その中で, 社会生活における一連の定型的行動がどんな連鎖をなるかが対人認知の要因となる. この連鎖に関わるスキーマスクリプトという. 本来は曖昧な因果関係を特定の原因に帰する過程を, 帰属過程という. ケリーは, 行動の有無に同調して働く共変要因には, 人物, 刺激事象, 時や周囲の状況があると考えた. 

 

態度とは, 一般に周囲のさまざまな事物・事象, あるいは個人や集団に対して, 一定の行動を生じさせる働きをする心的傾向をいう. 人々の態度を変化させようとする試みは, 多くの場合, 説得的コミュニケーションの形態をとる. この例として, マスメディアが挙げられる. フェスティンガーの認知的不協和理論によると, 自分の持っている知識のあいだの不一致は, 心理的に不快な状態(認知的不協和)を生じさせる. 

 

われわれの態度や行動は, 他者の存在やその働きかけの方法によって大きく影響される. こうした影響過程を一般に社会的影響という. 社会的影響のうち, 他者の「単なる存在」によって課題遂行に影響が及び, その課題の遂行が促進される場合を社会的促進という. ただし他者の存在が, 常に課題遂行を促進するとは限らず, 逆に抑制する場合も生じる. 社会的手抜きとは, 他者と一緒に課題を遂行するとき, 1人の場合と比べてメンバー1人当たりが発揮する努力の量が減ってしまう現象である. 集団の圧力により, 個々人の行動や信念が所属集団の基準に一致する方向へと変化することを同調という. 

 

人々との付き合いにおいて, 対人魅力を感じさせる条件にはいろいろなものがあり, 外見, 接触頻度, 誤帰属などが挙げられる. 自己開示には, 感情表出, 自己明確化, 社会的妥当化の機能があり, 親密な人間関係を発展させることができる. 一方, 自分に対して望ましい印象を他者に与えるため, 意図的, 作為的に行動することがあるが, このような行動を自己呈示(印象操作)とよぶ. 

 

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図3 指揮者はリーダーの一つの例

一般に, 集団意思決定は, 意思決定に参加した集団メンバーの行動を種々の面で拘束する. また集団決定は個人の意見や判断が集中討議を通して, 事前にあった傾向をいっそう強めるようになり, 個人による個々の決定よりも極端になる. このような現象は集団分極化現象とよばれる. 個人が群集の中に埋没して, 1人の人間としてのアイデンティティを喪失してしまうことを, 没個性化という. 集団目標の達成にとって役に立つ影響を与える特定のメンバーを, リーダーとよぶ. 三隅は, リーダーシップの機能を集団の目標達成機能集団維持機能に分けた. 

 

社会脳とは, 一般に, 社会的な認知を司る一群の脳領域を指す. フリスによると, 社会脳としては, 扁桃体, 側頭極,上側頭後部とそれに隣接する側頭ー頭頂接合部, 内側前頭前皮質などの4つの部位, およびミラーシステムなどが挙げられる. これらの領域は, 社会的相互作用の処理のみに特定化されていうわけではなく, 物理的対象の処理との関わりももつ. 顔認知の処理には, 特に紡錘状回顔領野(FFA)とよばれている部位が関わっていることが指摘されている. 

 

自閉スペクトラム症とは, 定型発達に比べて, 発達早期からの社会性, コミュニケーション, イマジネーションの3つの領域である「三つ組」の何らかの質的障害をもつ. 

 

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