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確率・統計の勉強 #3 期待値と分散の計算

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藤田 岳彦「弱点克服大学生の確率・統計」:

 

弱点克服大学生の確率・統計

弱点克服大学生の確率・統計

 

 

問題16 分散 より改題

 

 

使用する公式

<1>{\displaystyle \sum_{k=1}^N k  =  \frac{N(N+1)}{2}}

<2>{\displaystyle \sum_{k=1}^N k^2  =  \frac{N(N+1)(2N+1)}{6}}

<3>{\displaystyle \sum_{k=1}^N k^3  =  (\frac{N(N+1)}{2})^2}

 

問題

P(X = k) = ck (1 \le k \le N),その他の値では0のとき,以下を求めよ。
(1) 定数c

(2) E(X)

(3) E(X^2) 

(4) E(3-4X)

(5) V(X)

(6) V(3-4X)

(7) \sigma(3-4X)

 

期待値と分散の計算は確率分布をつかむ上で重要であるので,とにかく手を動かして慣れるべきである.本記事ではゴリゴリ計算を進めることを主として,期待値と分散の基礎については後日別記事で説明する予定である。

 

解法

(1) まず本問題の確率分布をまとめる。

X 1 2 ... N
確率 c 2c ... Nc

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図1 確率分布

 

 

全事象の確率は1であることを利用して,

{\displaystyle 1 = \sum_{k=1}^N P(X = k) = \sum_{k=1}^N ck \\ \displaystyle =  c \frac{N(N+1)}{2}}

 ここで公式<1>を用いた。これより,

 {\displaystyle c = \frac{2}{N(N+1)}}

 

(2) 期待値E(X)の定義 

 {\displaystyle E(X) =\sum_{k=1}^N kP(X = k)}

より,

 {\displaystyle =\sum_{k=1}^N ck^2 =\frac{2}{N(N+1)}\sum_{k=1}^N k^2}

公式<2>を用いて

{\displaystyle = \frac{2}{N(N+1)} \frac{N(N+1)(2N+1)}{6} =\frac{2N+1}{3}}

 

(3) (2)と同様に式を組み立てる。途中,公式<3>を用いる。

 {\displaystyle E(X^2) = \sum_{k=1}^N ck^3 =\frac{2}{N(N+1)}\sum_{k=1}^N k^3 \ \ \displaystyle =\frac{2}{N(N+1)}\frac{N(N+1)}{2}\frac{N(N+1)}{2} =\frac{N(N+1)}{2}}

 

(4) 期待値について,次のことが成り立つ。

a, b を定数とすると,E(aX + b) = aE(X) + b

これは,期待値において線型性が成り立つことを示している。

つまり,

E(3-4X) = 3 - 4E(X) \\ \displaystyle =\frac{5-8N}{3}

 

(5) 理論的な計算において,分散 V(X)は以下のように表される。

 V(X) = E(X^2) - (E(X))^2

したがって,

{\displaystyle =\frac{N(N+1)}{2} -(\frac{2N+1}{3})^2 =\frac{(N+2)(N-1)}{18}}

 

(6) 分散について,次のことが成り立つ。

a, b を定数とすると,V(aX + b) = a^2E(X)

つまり,

{\displaystyle V(3-4X) = 16V(X) =\frac{8(N+2)(N-1)}{9}}

 

(7) 標準偏差\sigma(X)の定義

\sigma(X) = \sqrt{V(X)}

また,次のことが成り立つ。

a, b を定数とすると,\sigma(aX + b) = |a|\sigma(X)

つまり,

{\displaystyle \sigma(3-4X) = |4|V(X) = 4 \times \sqrt{\frac{(N+2)(N-1)}{18}}}

 

以上基本的な計算手順である。Chapter.3では,P(X = k)に種々の確率分布の式を当てはめて,数列和の式から期待値と分散を求めていくところから始まる。 問題を解くために,上の「使用する公式」に加えて,今回は掲載しなかった等比数列の和(無限級数含む)についての公式も頭に入れておくべきである。

 

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