確率・統計の勉強 #12(最終回) 最尤推定からクラメール・ラオの不等式まで
藤田 岳彦「弱点克服大学生の確率・統計」:
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問題
解法
まず尤度関数について定義づける。
パラメータのときに値である確率は,
と表せる。一方,尤度関数は値が観測されたときのパラメータの尤度,
と表される。確率を確率密度関数に拡張して,一般に
かなりたつ(注意:尤度は確率ではない)。
データが複数ある場合,尤度関数は
となる。
よって正規分布の尤度関数は
と表せる。ここで
である(総乗)。
最尤推定とは,尤度関数(以後を省略)が最大になるパラメータを求めることである。最大化するにおいて,対数尤度関数
で計算すると楽である。ここで最尤推定量は
となるである。
よって正規分布では
対数尤度関数:
それぞれ偏微分して0と置くと,
これらの式を連立させて解いたものをそれぞれ,と置くと,
となる。
応用として,回帰分析における最尤推定が重要である。の誤差について
- 各について独立
- 正規分布に従う
と仮定したときの最尤推定量は,最小二乗法における正規方程式の解と一致する。
クラメール・ラオの不等式に到るまで
最尤推定の延長として,
- スコア関数
- フィッシャー情報量
- クラメール・ラオの不等式
について簡単に説明する。
スコア関数
定義:
つまり,対数尤度関数の微分である。なお,期待値は0である。
フィッシャー情報量
定義:
スコア関数の2次モーメントで定義される。 スコア関数の期待値が0であることから,分散と同義である。
クラメール・ラオの不等式
定義:
簡単にいうと,予想される分散はフィッシャー情報量の逆数以上である。
まとめ
ここまで全12回を4ヶ月に渡って投稿してきた。実際に問題を解くことで,数理統計学にある式の意味がわかるようになったように思う。扱った内容はいずれも基礎的な話であり,今後の応用にどう結びつけるかが重要であろう。
(終)