「心理学 第5版」 要約メモ #1 全体の概要,Ⅰ部
1年ほど前に読んだ心理学の教科書についての要約を,最近になって発見.その内容をここに掲載することにした.
全部で10章あるが,文字数調整のため何回かに分けて載せる.#1では全体の流れとⅠ部について扱う.
全体の概要
紹介する本:「心理学 第5版」東京大学出版会
読了日:2018/01/28
レビュー:心理学の入門書といえばヒルガードだが, あれは大きすぎると感じ, 本書を読んだ. ページ数の割に, 要点が圧縮されており, 充実した内容であると感じた. /心理学全般のシラバスとして本書を用いて, 各専門分野を勉強するのが良さそうである.
https://i.bookmeter.com/reviews/69599092
目次
Ⅰ部 こころのありか
1章 心理学の視点
1. はじめに 2. 心理学の方法 3. 行動研究と心理学
2章 行動の基本様式
1. 行動の水準 2. 感覚支配的行動 3. 習得的行動 4. シンボル機能と発達レベル 5. 意識と行動 6. 意識の成立過程
3章 発達ー遺伝と環境
1. 遺伝と環境ー行動発達を規定する要因 2. 発達的変化 3. 発達障害
Ⅱ部 こころの働き
4章 学習・記憶
1. 条件づけ 2. 技能学習 3. 社会的学習 4. 記憶 5. 学習・記憶の神経学的基礎
5章 感覚・知覚
1. 感覚の分化と統合 2. 視知覚 3. 聴知覚 4. 触覚
6章 思考・言語
1. 問題解決 2. 問題解決と認知発達 3. 知識 4. 推論と発見 5. 非言語的コミュニケーション 6. 言語的コミュニケーション行動の形成 7. 言語の特性 8. 脳損傷と高次機能の障害
7章 動機づけ・情動
1. 食と性の動機づけ 2. 基本的情動 3. 親和動機づけ, 活動と探索の動機づけ 4. 達成と自己実現の動機づけ 5. フラストレーションとコンフリクト(葛藤)
8章 個人差
1. 知能の測定 2. 知能の因子 3. 知能発達の要因ー遺伝対環境 4. 性格 5. パーソナリティ発達の要因 6. パーソナリティの不適応・障害
9章 社会行動
1. 社会行動の発達 2. 社会的認知 3. 態度と説得 4. 社会的影響 5. 対人魅力と対人関係 6. 集団の中の個人 7. 社会脳
Ⅲ部 こころの探求
10章 心理学の歴史
1. 「こころ」の概念 2. 精神医学の影響 3. 感覚の研究 4. 心理学の成立 5. 生物科学の発展とその影響 6. 科学としての心理学の展開 7. 心理学の現況
Ⅰ部 こころのありか まとめ
1章 心理学の視点
心理学は, こころについての科学的研究を目指す学問であり, こころの理解を目標とする.
19世紀, 実証主義の気運の中, ヴントは心理学の研究に内観法を用いるべきだと主張した. 内観法では, 実験室の中で被験者に刺激を提示して, その内観報告を実証的なデータとした. しかし個体発生的研究は除外された.
人間のこころは, 色々な進化レベルの動物種と比較する系統発生的研究によって, その特徴を浮き彫りにすることができる.
心理学にとって, 種々の心的障害に対して, どのように援助するかが1つの実践上の問題である. これに対処するには, 臨床的・病理学的研究が必要になる. 例えば, 内観による言語報告から, 当人の心的状態を推論することが求められる.
20世紀初め, ワトソンは行動主義を主張した. 行動主義は, 刺激と反応との結合関係(S-R結合)を明らかにすることが心理学の仕事であるとした.
現在, 心理学では, こころとは生体の複雑な行動を支える内的過程を指す. この内的過程は, 高次の脳の活動で支えられている.
2章 行動の基本様式
直接的行動(感覚支配的行動)は, 比較的短い神経回路によって支えられている行動である. 例として, 反射的行動や本能行動が挙げられる. 一方, 間接的行動(認知的行動)は, 受容器-効果器の間に上位中枢の複雑な過程が内在する行動である.
習慣的行動の中で最も基本的なものは, 条件付けによる行動である. 条件づけは, 古典的条件付けとオペラント条件づけに分けられる.
遅延反応の実験から, 間接化した状況における生体の行動の特徴が明らかになる. ヒトの場合, 対象をことばやイメージなど内的な表象に置き換えて記憶し, 内的に保存することができる. この過程をシンボル過程とよび, 高次の中枢の働きと関係する.
言語は, 自己調整機能の役割をもつ. 現代の心理学では, 意識とは, ヒトや高等生物が正常な覚醒状態にあり, 環境の刺激に対して応答しうる状態を指す.
シンボル機能の発達に伴い, 対象物の永続性の概念が完成する. 自己意識の発達に伴い, 自己鏡映像認知が成立するようになる. 意識の発生段階は1. 意識の存在なし 2. 意識の萌芽 3. 再帰的モデル に分けられる. 他者のこころを推量する働きを「心の理論」とよぶ. 誤信念課題から, 心の理論をもつには長期間の発達過程が必要であることが示される.
3章 発達
行動やこころを特徴づける要因は, よく生得的要因と環境的要因に分けられる. その2つが相互作用しながら発達過程を形成していく. 例えば, 本能行動は環境の影響を受けるかによって, 完了的位相と予備的位相に分けられる. ヘッブは行動発達における要因を6つに分類した.
成熟に至るまでの発達段階は, 分化と統合の変化が生じる. 量的な発達変化には身体変化が含まれる. 一方, 質的な発達変化としてみたとき, 発達段階から構成される序列として考えられる. 刷り込みとは, 初期に生じる特殊な学習であり, 臨界期の存在や非可逆性などが特徴として挙げられる. 基本的な情報処理の過程において, 初期経験が重要である. ゲゼルらによる成熟優位説は, 特定の訓練を習得するには, 学習準備性(レディネス)が必要であると指摘した.
自閉症は, 社会性障害, コミュニケーション障害, 想像力障害のウィングの三つ組症状が現れる発達の異常である. アスペルガー症候群は自閉症と似た特徴をもつが, 言語や認知発達の遅延が見られない. 多動性障害は, 不注意, 調節不動の多動などを症状とする.
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