「西洋美術の歴史」要約メモ #8 第4巻序章〜第3章前半
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第4巻の概要
序章
- 本巻で扱う時代
- 「美術の歴史」と「美術史」のはざまで
- 人間の似姿を描くー肖像画と「芸術家」の誕生
- 後戻りできない美術の発展
- アルプス以北の美術との交流
第1章 イタリアの1300年代美術
第2章 国際ゴシック様式(1370年頃〜1450年頃)
第3章 15世紀のイタリア美術
- 不安と好奇心に満ちた時代
- 芸術の祖国フィレンツェの革新と多様な試み
- 地中海航路の美術ー異なる絵画様式の特別な融合
- フィレンツェの大工房
- ヴェネツィア共和国と美術
- ルネサンス宮廷と美術
- 15世紀の教皇とローマの美術
第4章 盛期ルネサンス
- 1490年以降のフィレンツェ
- 「偉大なる知性」レオナルド・ダ・ヴィンチー思索と素描の生涯
- 神のごときミケランジェロ
- 教皇たちに寵愛されたラファエロ
- 16世紀前半のイタリア
- マニエリスム美術とその再評価
- トスカーナにおけるマニエリスム美術
- ローマにおけるマニエリスム美術
- ヴァザーリと「マニエラ」の理論化
- 対抗宗教改革と「マニエラ」の変容
第5章 ヴェネツィアの美術
序章
ルネサンス期の美術とは:
- 個人としての人間とそれを取り巻く環境を表現
- ギリシャ・ローマの古代美術,自然の現象世界そのものに求める
イタリア・ルネサンス美術の流れ:
- ルネサンス揺籃期(14世紀後半,ジョットにはじまる)
- 教条主義的な宗教美術(トスカーナ地方でのペスト流行以後)
- 国際ゴシック様式(1380年〜)
- 初期ルネサンス(15世紀はじめ,フィレンツェより)
- 盛期ルネサンス(レオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロなど)
- マニエラ・モデルナ(16世紀はじめ,アンドレア・デル・サルトなど)
学問としての美術史の起源は,イタリア・ルネサンスにある。その中で1455年まで書かれ続けたロレンツォ・ギベルティ「備忘録」は,後世への影響が大きかった。
アルプス以北との交流は,ルネサンス揺籃期から行われていた。ルネサンス美術はイタリア内だけでなく,アルプス以北との美術による影響を受けながら進展していった。
第1章 イタリアの1300年代美術
ジョットの名声は,ダンテ「神曲 煉獄篇」やボッカッチョ「デカメロン」にも書かれている。ジョットが成し遂げた革新として,「荒削りなビザンティン様式を捨て,古代ローマ風様式に戻し,現代風に改めた」ということが一般的に言われている。例えば壁画「イサクから拒否されるエサウ」ではジョルナータシステムが採用されている。代表作に「荘厳の聖母」「最後の審判」があり,これらからは古代美術の再生が感じられる。
イタリア14世紀美術において,シエナはフィレンツェに並ぶ重要な都市である。シエナの代表的な画家に,ドゥッチョ(「マエスタ」など),ピエトロとアンブロージョのロレンツェッティ兄弟(「聖母の誕生」「善政の寓意」など)が挙げられる。「善政の寓意」において,公共善の概念が寓意として描かれており,ノーヴェ(当時の為政者)による理想国家の実現への思いが読み取れる。
各地での1300年代における動向
- ドメニコ会の都市進出,トマスアクィナス「神学大全」など
- ピサへのシエナ絵画様式の流入,フランチェスコ・トライーニ「聖トマス・アクィナスの栄光」,ブッファルマコ「死の勝利」など
- リミア派,ヴィターレ・ダ・ボローニャ「聖ゲオルギウスと姫君」など
- アヴィニョン派,シモーネ・マルティーニ「受胎告知と二聖人」,マッテオ・ジョヴァネッティ「聖マルシャル伝」など
第2章 国際ゴシック様式(1370年頃〜1450年頃)
国際ゴシック様式では,封建貴族の退廃主義的傾向と台頭する新興富裕層の自然主義的傾向との二重性が現れている。イタリアではまず,フランス王家との密接な関係により,ヴィスコンティ家が支配するロンバルディアから発展が始まった。ロンバルディアの代表的な画家に,ジョヴァンニーノ・デ・グラッシ(「素描帖」など),ミケリーノ・ダ・ベゾッツォ(「聖女カタリナの神秘の結婚」)などがいる。
トレントやピエモンテは,アルプスの南北を結び国際ゴシック様式の伝播に機能した。その後,ヴェネト地方に伝播した。代表的な画家に,ステファーノ・ダ・ヴェローナ(「バラ園の聖母」など),ピサネッロ,ジョヴァンニ・バディーレ,ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノがいる。更にトスカーナ地方,ウンブリア・マルケ地方へも伝播した。
第3章 15世紀のイタリア美術
一言でいうと,一五世紀は懐疑主義までには至らない不安と,向こうみずな好奇心とに満ちた時代である。世俗文化の新たな権威者(人文主義者)たちは無理やり伝統を打ち壊そうとはせずあらゆる領域に最大の力を注いだ。(本書p196)
初期ルネサンス美術は彫刻と建築から始まる。代表的な彫刻家に,ギベルティ,ブルネルスキ,ドナテッロなどがいる。 一方絵画においては,マザッチョ,アンジェリコ,フィリッポ・リッピ,パオロ・ウッチェッロなどがいる。ここでは線遠近法や等頭表現などの発明がみられる。
15世紀後半には,フィレンツェの大工房から多くの作品があらわれるようになる。特に当時,ポライウオーロ兄弟の工房とヴェロッキオの工房が繁盛していた。工房で修行した画家に,レオナルド・ダ・ヴィンチやボッティチェリ(「剛毅」「プリマヴェーラ」「神秘の磔刑」など)がいる。
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